3日後から、小狼はまた普通に生活を始めた。
さくらも小狼の部屋へ行き、掃除をし、また小狼と言葉を交わす事の出来る時間が出来た。
正直な所、小狼の部屋への立ち入りが禁止されている残りの2日間、さくらは小狼のことが心配で心配で仕方がなかったので、 3日目の朝は特別早起きをしてしまったほどだった。
小狼に言われたとおり、新月の夜のことは誰にも話さず、態度にも出さないように心がけていた。
小狼も小狼で今までと変わらずに生活をしているので、特に変わりはなかった。







「はーぁ、小狼様の立ち入り禁止期間になると、あたしたちもヒマよねぇ〜」

それから約半月後の満月の立ち入り禁止期間。
さくらとすみれは、小狼の部屋への立ち入り禁止期間には、他の場所の担当を与えられていた。

「ってゆーか、前後2日間、イコール5日間って長すぎると思わない? 新月と満月の間って半月くらいしかないんだから、半分以上はあたしたち用なしなのよ?!」
「そ、そうですね・・・。でも、仕方がないんじゃないでしょうか」
「そーよ、仕方がないのよ、小狼様が決めた事ですもの!でも、こう、メイドとしてどうよ?ってね」
「あはは・・・」

ざかざかと客間から続くテラスを掃除しながらすみれがぶつぶつと言った。
満月と新月の感覚はおよそ半月。
新月がきて、満月になり、また新月になり・・・。ひとつの月の周期は約一ヶ月だが、新月と満月となると半月になる。

「いっそのこと、他の担当がメインで、小狼様の担当がついでならわかるんだけどなぁ」
「もう、すみれさんったら、そんなに文句言ってると奥様に見つかっちゃいますよ?」
「さくらはイイコね〜。そうね、真面目に真剣に、ここを掃除しちゃうことにするわ」

―― 今日は満月・・・。新月の時と同じように・・・小狼様・・・辛くないのかな・・・。

空を見上げて、白く見える真昼の月を見てさくらが思った。

―― 月の満ち欠けがなくなっちゃえばいいのに・・・そうすれば小狼様だって・・・。

「今日は満月だったわね。んん?心配?」
「す、すみれさんっ」
「ハイハイ。恋する乙女は可愛いわねっ」
「もう、からかわないでくださいっ」
「あはは!まぁ、満月の期間だけは小狼様、部屋から出てこられないから、心配といっては心配よね」
「新月の時は学校に行っていらっしゃるけど・・・」
「満月の時は行ってないものね。李家の謎って感じね」
「・・・・・・」

―― ずっとお部屋にひとりなんだ・・・小狼様・・・。