「えーと・・・なんか聞き覚えのある名前が聞こえたんだけどなぁ?」
知世の様子を見ていたファイが知世の背中に向かって言った。
くるりと知世が向き直る。
「とりあえず、ここはどこかと、君の名前を教えてくれたら嬉しいんだけどな」
いつものにこやかなスマイルでファイが言った。
「私は、大道寺知世。ここは私の家の庭ですわ」
「ここが庭なんだ〜。すごいねぇ」
「で、ここはなんて場所なんだ?」
「日本国の友枝町ですわ」
「知世ちゃーーーーーーーん!」
上空から聞き慣れた声が舞い降りた。
ばさっと通路に舞い降りて、パタパタとさくらと小狼が走ってくる。
「さくらちゃん!お待ちしておりましたわ!」
「どうしたの?何があったの?」
「それが・・・」
ついっと視線でふたりを4人と一匹に誘った。
その光景に全員が唖然とする。
『さくら』と『小狼』がふたり存在する。
「突然、ここに現れたんです」
「この国は魔法が使えるんだね〜」
「説明が足りなくてすみません。おれたちは異世界を旅している者です」
シャオランがすっくと立って言った。
背丈も声もどちらの小狼もほぼ同じだった。
「よろしければ、名前を聞かせていただけませんか」
慎重に言葉を選びながらシャオランがさくらたちに問いかけた。
「木之本桜です」
「・・・李小狼」
その言葉に旅をしている一行が驚きの表情を隠せなくなった。
小狼とさくらの顔を穴が開くほど凝視している。
小狼とさくらもじっともう一人の自分を見つめていた。
「この国のシャオラン君とサクラちゃんに出会うことになるなんて・・・」
「不思議なことじゃねーだろ。・・・想像できる範囲内だ」
「確かに、不思議ではありません。おれたちが他の世界にいてもそれは自然なことです」
「もうひとりのわたし・・・」
確かに、他の世界で暮らしている自分がいてもおかしくはない。
ただ、これまで一度も出会わなかっただけの話なのだから。
もう一人の自分に出会う確率は極めて低い。そして、出会うとは夢にも思っていなかったのだ。
「あの方達もおふたりと同じお名前なんです」
「えっ」
「そして、金髪の方がファイ・D・フローライトさん、
黒髪の方が黒鋼さん、そちらの小さな方がモコナさんとおっしゃるそうです」
「あはは、名前長いでしょー。ファイでいいよー」
さくらと小狼もあっけにとられていた。
明らかに季節外れの服装。同じ姿で同じ名前の人。
話によれば異世界を旅しているとのこと・・・。
「パラレルワールドみたいなものか」
小狼が静かに言った。
「パラレルワールド?」
「違う世界がいくつも存在していて、そこでは自分と同じ姿、名前の人が別の人生を歩んでいるっていうこと。つまり異世界」
「なるほど、パラレルワールドなら理解できますわね」
「パラレルワールド・・・か・・・。でも、不思議だね。こうして出会えるのって・・・」
「ああ・・・まさかパラレルワールドの自分に会えるとは思わなかったけど・・・」
「とりあえず・・・」
すっと知世が家を指した。
「ここでこうしているのもなんですし、私の部屋に行きませんか?」
知世の案内に従って、全員がぞろぞろと知世の部屋に向かった。
さすが、大道寺家一人娘の部屋とあって、広々としていて、これだけの人数がいるにも関わらず余裕だった。
メイドがお茶とお菓子を人数分運んできて、会議開始だ。
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