「そういえば・・・」
「ん?」
小狼の家で夏休みの宿題を一緒に進めていた午後。
数学の問題に頭を悩ませていたさくらに小狼がふと言った。
「あの羽根、どうしてる?」
「あれ?ちゃんとしまって『盾』
で守ってるよ。『盾』は魔力の消費も少ないし、全然平気だよ」
「そうか・・・。いつ来るんだろうな・・・その必要としてる人は・・・」
「そうだねぇ・・・もう一ヶ月半だし・・・そろそろだと思うけど・・・」
「んん?」
「わたし、そんなに遠い未来まで見てないもの。それに、もうすぐだと思う」
ピピピピピ・・・。
さくらの携帯電話の呼び出し音が響く。
「あれ?知世ちゃんだ」
携帯電話の液晶画面を見てさくらが言い、ピッと通話ボタンを押した。
「はい、さくらです」
『さくらちゃん、今どちらにいらっしゃいますか?』
「え?小狼君のとこだよ。宿題やってたの」
『では、李君もご一緒なのですね!』
「うん。一緒だよ」
『今すぐ私の家に来てくださいませんか?』
「え?今すぐ?」
『ええ、急いで来て欲しいんですの。大丈夫でしょうか』
「あ、うん。わかった、すぐ行くね」
『庭でお待ちしています』
ピッと通話終了ボタンを押した。
あんなにせっぱ詰まったような知世は珍しかった。
何かあったんだ・・・。
「小狼君、今から知世ちゃんの家に行こう!」
「な、きゅ、急になんだ?」
「なんか、大事なご用なんだって!今すぐ急いでって言ってたの!」
「おれも一緒に?」
「うん!」
「い、急ぐと言っても、ここからじゃ20分はかかるぞ?」
「大丈夫!飛んでいくから!」
「『翔』は一人しか使えないだろ!」
「心配しないで!早く早くっ。ベランダからなら魔法使っても大丈夫だよねっ」
「あ、ああ・・・」
ガタガタと筆記用具たちをカバンにしまい込んでさくらが言った。
バタバタと玄関まで言って靴をとってくるとベランダの扉を開けた。
小狼もそれに続く。
「封印解除!」
「で、どうやって行くんだ?」
「『翔』!!」
さくらが『翔』のカードを使うと、闇の杖だったときのように、星の杖の羽根の部分がバサッと翼となった。
その光景にあっけにとられる。 さくらは確実に魔法を使いこなしている。そして、進化させている。
とんっと軽々と杖に乗る。
「小狼君も!」
「あ、ああ」
小狼が乗ると、軽やかに飛び立った。
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