「感じるよ、強くなってる」
「ああ、すごい力だ」
「でも、魔力じゃないよね・・・」
「わからない。でも、霊や悪いものじゃない」
「うん」
がさがさと力の気配だけを頼りに進んでいく。
何があるのかわからない。どんな力なのかわからない。
けれども、さくらが進もうと思えるのはひとりじゃないからだった。
「あの樹からっ!」
ぽっかりと大きな空間ができていて、その中心に大木がずっしりと腰を据えていた。
ざっと見ても樹齢300年は超す大木だ。
その木が不自然に光をあび、輝いていた。
その樹を見て、さくらが駆け寄った。
「小狼君!これっ・・・」
さくらが根本にしゃがみこみ小狼に叫んだ。
そして、手になにか光るものを持って立ち上がった。
さくらの元に小狼が駆け寄る。
「何だ・・・?ものすごい強い力を感じる」
「見て、これ。不思議な羽根なの」
さくらが手元にしているのは光り輝き浮かぶ大きく何か模様のついた羽根だった。
「強い力だ・・・」
小狼が羽根を見て言った。
「何でこんなところにこんなものが・・・」
さくらが不自然にじっと羽根を見つめていることに小狼が気がついた。
「さくら?おい、さくら?大丈夫か?」
さくらの瞳は羽根をとらえて離さない。 何か、その先の遠くを見つめているかのような瞳だ。
そして静かに言った。
「これを必要としている者がいつか来る・・・」
「・・・さくら?」
「その子が来たら・・・時がきたら・・・渡さなくちゃいけない・・・。それまで・・・守らなくちゃ・・・」
さくらが静かにそう告げるのを小狼は心配そうな表情をして見つめていた。
なにか、この羽根の影響でも受けてしまったのだろうかと、必死で考えていた。
「『盾』で大丈夫かな?」
きょとっとした声で突如さくらが小狼に言った。
その声色の変わり具合に小狼が思わず取り乱す。
さっきと180度違うような声だ。
「さくら・・・?大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。ちょっと未来を視てみたの」
「みっ・・・未来を!?」
「うん。正確にはわからないし、使いこなせないからハッキリしたことはわからないけど・・・。さっき言ったでしょう?」
「この羽根を必要としているものがいつか来る・・・?」
「うん。だから、わたしはそれまでこれを、この羽根を守らなくちゃいけないの。その子たちが来たら渡さなくちゃ」
「・・・なるほど・・・。さくらが視たのなら・・・大丈夫だろ・・・」
「ありがとう」
正直に言うと、小狼は驚いた。
未来を視てしまう力をコントロールできるとエリオルは言っていたけれど、
まさかさくらが自ら未来を視る力を操っているとは思ってもいなかったからだ。
こうして、必要なときだけ、そのものに必要な未来だけを視る力を・・・。
「ね、『盾』で大丈夫かな?」
「そうだな・・・。なにか容器に入れて、それに『盾』をかけるほうがいいかもしれないな。
大切なものであればあるほど力を増す『盾』だから・・・」
「大切だよ。これはとっても大切なもの」
「なら大丈夫だろう」
「じゃ、今はとりあえず『盾』で保護しておくことにしよう。帰ったらきちんとしなくちゃ」
「ああ」
「彼の者を守りたまえ 『盾』!」
ぽうっと『盾』が発動して羽根が包まれた。
この羽根を必要としている人が近い将来、友枝にやってくる。
それまで、守らなければ・・・。
そして、その人にきちんと渡さなくては・・・。
この強い力は世界中のこっちの業界人が注目するほどの力がある。
けれど、これをその人たちに渡すことはできない。
だから・・・守らなければ・・・。
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