「わあ・・・!出来上がったのね!」
「なかなかいい具合に加工出来たと思うわ」
海に帰ってから三週間後、真珠たちと会う約束をしていた日。
加工されたウエディングドレスを渡してくれた。
爪先まであったドレスの丈を、前の方は短く、後ろは長く綺麗にしっぽが映えるように切ってくれている。
腰回りには切り取った布で花のような飾りを作ってくれてあった。
海の世界に合わせて、胴部分をなくし、胸当ては少し豪華に作り直されている。
ヴェールも髪飾りのように固定出来るよう作り直されている。
泳いだら脱げた、なんてマヌケなヴェールやだもんね、と真珠が笑った。
確かに、そうね・・・。
「一応、こっちで使ったアクセサリーと合うようにとは思って直してあるけど、
豪華さに欠けると思うから、そっちで色々調整してね。王女様のドレスとしてはささやかすぎると思うし、
やっぱ人間が着て映えるのと人魚が着て映えるのじゃ違うのよね・・・」
「わかったわ。ありがとう、雫。ふふっ、当日の湊の反応が楽しみだわ」
「ん?当日?歌音、帰ったら見せればいいじゃない。準備とかで会うんでしょ?」
「それがね、諸事情あって、今会えないのよ。単に準備で忙しいというのもあるんだけど・・・」
「へえ・・・」
「あ、そうそう、わたしからも渡しておくわね」
持ってきた小さな袋を真珠に手渡す。
中身は数年前にみんなを招待したときにも渡した、あのブローチ。
人魚の世界への招待状。
「父様から許可が下りたわ。どうぞ、結婚式いらして」
「わあ・・・!嬉しいっ!ありがとう!」
「やった!休みとっておいてよかったー!」
「こちらの事情で悪いんだけれど、一日前から来れるかしら?」
「うん、へーき。バッチリ休みもぎとってあるから!」
「海は遠いからね。ああ、楽しみ!王女様の結婚式!」
「旅行と言っても過言じゃないもんね。まりあにお土産は?って聞かれたときはドキッとしたわ」
「まりあちゃん、あくあの双子の妹なのに人間だもんねー。でも、知ってるんでしょ?」
「人魚だっていうのは知ってるんだけど、ほら・・・別に見せることもないし話題にすることもないから。
海に行ってくる、なんて言ったらきっと“何言ってるの?”って言われちゃう」
「海から持ち帰れるモノがないのは、申し訳ないわ」
父様にみんなを招待したいと言ったら、快諾してくれた。
むしろ結婚式でお世話になったのだから是非に、と言ってくれた。
母様もまたみんなに会いたいわ、と言ってにこにこしていらして、ドレスや指輪のを取り込みたいという件も、とっても喜んでくれた。
海の世界には正式な“結婚式衣装”なんてものは存在しない。
アクセサリーやちょっとしたもので着飾る程度で、特に取り決めもない。
男性の方もマントがあるくらい。
だからね、人間界の素敵な文化は取り入れてもいいと思うのよ。
わたしの結婚式を見て、少しでも素敵だと思ってくれた人たちが、自分たちの結婚式でも使ってくれれば・・・こんなに嬉しいことはないわ。
2014.07.18.
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