『星の都・シレーネ』

「次の世界にとうちゃーく☆」

ぴょこんとモコナがひとつ跳ねて言った。
小狼・サクラ・ファイ・黒鋼がよいしょ、と腰を上げる。

「次はどんなとこかなーっ」
「けっ、まともにつけねーのか」
「なんだか空が近い気が・・・」
「・・・・・・姫、それ・・・」
「え?」

パンパンと自分のスカートについたホコリを払ってサクラが小狼に視線を合わせた。
そして、驚愕する。
同じく、小狼も目を見開いている。

「小狼君・・・それ・・・」
「ファイさんも、黒鋼さんも・・・?!」
「あれれー?何だこれ」
「はあ!?ふざけたカッコにしやがって!何なんだ!?」

全員が円のようになってお互いの姿を見合った。
全員に鳥のような翼が付いている。
背中から生えた翼。それはまさに天使という生き物のようだった。

「まるで天使みたいだねー」
「すごい、これ、自分で動かせるんですね」

パタパタとはばたかせてサクラが言った。
真っ白な翼を持った小狼とサクラ、逆に漆黒の翼を持った黒鋼とファイ。

「とにかく、ここがどこか確かめないといけませんね」
「こんなふざけた国、さっさと移動しちまおうぜ」
「ダメだよ!黒鋼っ。ここサクラの羽根あるもんっ」

ぴょこんと黒鋼の頭に乗りながらモコナが言った。
その言葉に小狼が反応する。

「この国に姫の羽根が!?」
「うん、あるよ。気配感じるもん」
「そっか・・・!」
「じゃ、とりあえず、町を探さなきゃだね〜。ここじゃ情報がないもんね」
「はい」
「これ、飛べるのかな?」
「さあ・・・」
「わわっ。見て見て小狼君っ。ちゃんと飛べるよっ」

ふわりと地から足を浮かせてサクラが言った。
バサッと大きく羽ばたくと、さあっと空に舞う。

「素敵素敵っ!空が飛べるなんて!」
「ほんとだー。ここって天使の国なのかなぁ」
「へーへー。で、町に行くんだろ?」
「飛んでけばいいじゃんー。ほら黒様もー」

サクラと共に空中散歩を楽しんでいるファイがぐいぐいと黒鋼の頭をひっぱった。
サクラも小狼のことを誘っている。

「あれ?見かけない顔ですね」

空から降ってくる声に、全員がバッと視線を向けた。
そこには3人の天使がいて、ふわりと舞い降りてきた。

「服装も変だし・・・お客様ですか?」
「え、えっと・・・」
「オレたち、さっきここについたばかりなんですよー」
「まぁ、そうだったんですか。どちらから来たんですか?」
「えっと・・・遠い他の国から・・・」
「人間界?」
「え?!」

全員がその言葉に声を上げた。
“人間界”それは、人間が住む世界を示す言葉である。

「翼に戸惑っていらっしゃるようでしたし・・・」
「違うわよ、スウ。だって人間がここに来れるわけないじゃない」
「えっとぉ、正直に言いますと、他の世界から来たんですー」
「なるほど!だからおかしな格好をしていて、翼に困ってたんですね」
「あの!ここはどこですか?」
「ここは天界、星の都シレーネの近くです」
「天界!?」
「星の都?」
「シレーネ・・・」
「天界って天使さんとか神様がいるんだよね?侑子の本で読んだんだ〜」

4人が必死で考えを巡らせていた。
今まで様々な世界・国を旅してきたが、羽の生えた人間、 天使が住む世界など初めてで、おまけにここは天界だと言う。

「んー・・・まぁ、世界は世界だし、不思議はないよねぇ」
「そうですね・・・」
「みなさま、この世界に初めて来られたようですし、ご案内いたしましょうか?」
「いいんですか?」
「ええ。これから神殿へ戻るところでしたし」
「じゃ、お願いしますー」
「はい。あ、自己紹介が遅れました。小鳥と申します」
「天使の琥珀です」
「・・・スウです」

3人の天使が挨拶した。
ふわふわのウェーブ髪が特徴的な小鳥。
金髪の綺麗なすらっとした容姿の琥珀。
少し無愛想な、小さな少女スウ。
3人とも白く綺麗な翼を持ち、ふわりとした服を身にまとっている。

「小狼です、宜しくお願いします」
「サクラです」
「ファイって呼んで下さいー」
「・・・黒鋼だ」
「モコナ!」

ぴょこんとモコナが琥珀の肩に飛び乗った。

「よろしくお願いします。では、ご案内します!ついてきてください」

そう言うと、琥珀を先頭に、ファサッと飛び立った。
一瞬顔を見合わせて、小狼達も飛び立つ。

「あの!どこに行くんですか?」
「神殿です。私たちは神殿に仕える天使なんです」
「着いたら色々とお教えしますね」
「はい・・・」

思っていたよりも飛ぶことは簡単で、すぐに4人とも慣れた。
案内されたのは、町の中心にある大きな神殿だった。
町は白を基調に建物が並び、空にはたくさんの天使が舞っていた。
しかし、どこを見ても“星の都”という名の付く要因は見あたらない。
そのことを疑問に思いながらも、小狼たちは案内されるがままに神殿にたどり着き、 衣服を着替えるようにと服を渡された。
もちろん、男性3人とサクラは別行動となった。