2日後。 シャオラン・サクラ・ファイ・黒鋼・モコナは新たな異世界へと旅立つことにした。
ゆっくりと話し、街を歩き、知世特製の服をさくらとサクラに着せ存分に撮影会をし、
しまいにはWさくらW小狼という奇跡の組み合わせで撮影会をした。
黒鋼と小狼で手合わせをしたり、さくらと小狼とファイで魔法について語ったり、
モコナとケロはかなりの良いコンビになっていた。
青い空を眺め、緑の芝生を踏みしめ、夜空の星を愛でる・・・そんな安らぎの時を過ごした。
この友枝はかつてないほど平穏で争いごとが無く、人々も暖かく幸せな世界だった。
藤隆の話が出ることもなく、クロウ・リードの話がでることもなく、
こじれた話をしないですんだのも救いのひとつだ。さくらの父が藤隆で、
シャオランの父が藤隆、クロウはすでに亡くなった小狼の血縁で、
サクラの父がクロウ、だなんて心を乱すような話・・・。
そして、出会った庭で別れの時を迎えた。
「お世話になりました」
「とっても楽しかったです」
サクラとシャオランが丁寧に挨拶をした。
「こちらこそ、とても楽しかったですわ。
さくらちゃんとサクラさんのツーショットという貴重な映像も納められましたし」
知世が満足と幸せいっぱいの瞳を輝かせて言った。
さくらにお手製の服を着せて撮影する機会が減っていた知世はこの機会を存分活用していて、
今も最新のデジタルビデオカメラをまわしている。
「なかなかだったぜ、小僧。良い腕してるな」
「ありがとうございます」
ふっと黒鋼が口の端で笑って小狼に言った。 小狼のこともシャオランのことも
“小僧”と呼ぶからややこしい。ケロにも言われ慣れているせいか、小狼は“小僧”という呼び名にもすんなり対応していた。
「さくらちゃんの魔法、興味深かったよ〜」
「いえ、ファイさんの方が知識があって・・・」
「でも、そんなに強い魔力を持ってるのにその程度じゃもったいないような気もするなぁ〜」
「そ、そんなことないですっ。ファイさんこそ・・・」
「さくらちゃんは事実上この世界で一番強い魔力をお持ちですから」
「と、知世ちゃんっ」
「あら、柊沢君もおっしゃっていましたし、事実ですわ」
「そんなにすごい魔法使いさんに会えちゃったんだ!光栄だな〜」
「すごいですね」
「そそそ、そんなことないんだよっ。全然っ」
「みんな、そろそろ行くよ〜」
モコナがすうっと空に浮かぶ。
バッと翼が広がり、大きな口を開けた。
「シャオラン、サクラ姫!きっと、絶対大丈夫だよ!だから、頑張って!」
「ありがとうございます」
「はいっ」
しゅんっとモコナが消えて、異世界からの訪問者は次なる世界へと旅立った。
「素敵な方達でしたわね」
「うん。とっても・・・」
「いい勉強にもなったしな」
「世界は広いっちゅうこっちゃな・・・うん」
きゅっとさくらと小狼は手を繋いだ。
「大切なことも教えてくれたよね」
「ああ・・・」
しばらく彼らが消えた空間を見つめていた。
彼らのこれからの旅の無事を祈って・・・。
*Fin*
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