「一週間お世話になりましたっ」
真珠達が帰る日。
家族総出で見送りに来た。
「こちらこそ、ありがとう真珠さん、
あくあさん、雫さん。人間界のお話が聞けて楽しかったわ」
「また機会があったら来て下さいな」
「ありがとうございます」
「海の世界もとっても素敵で・・・来れると思っていなかったから嬉しかったです」
「じゃあ、母様、父様、わたし上まで送ってきます」
「気をつけて歌音」
「はい。行きましょう。早くしないとタイムオーバーよ」
「そっか。そうね」
「本当に、ありがとうございました!」
真珠達を先導して上へ上へと泳ぎ出す。
そして、ざんっと水面を突き破った。
夏の朝は日が昇るのが早い。
辺りはもう明るくなっていた。
「わー、空気だ!」
「まぶしーいっ」
「なんか懐かしいー」
「ふふっ。たったの一週間じゃない」
「そうね。歌音からしたら短いわよね」
「ほらほら、早く陸に上がって。海輝が来てるわ」
陸を指さす。
そこでは海輝がひらひらと手を振っていた。
みんなで陸まで泳いでいく。
「おはよう、歌音、真珠、あくあ、雫」
「おはよう、海輝」
「ほんとに早いわね、海輝」
「迎えに来てくれてありがとう」
「ところで今何時?」
「6時前よ。はいはい、上がって。タオル持ってきたんだから」
「はーい」
ざざっとみんなが陸に上がる。
今日からはまた、違う世界で生活するのね・・・。
人魚として一緒にいた一週間が夢みたいに思えてくる。
「歌音、本当に一週間有り難う」
「とっても楽しかった。貴重な経験だったわ」
「お父様達にもよろしくね。今度は歌音がこっちに来てよ?」
「ええ。楽しみにしてる。あ、海輝、そういえば結婚するって・・・」
「あ、話しちゃったのー?そうなの。ねぇ、歌音。私と一緒に歌ってくれる?」
「もちろんよ。楽しみ!」
「ありがと。日程とか決まったら教えるわ」
「うん。じゃあ、わたし、そろそろ戻るわね」
「歌音、また次の満月にね!」
「はーいっ」
くるりと背を向けて、一気に下へと潜った。
ほのかに水の中まで照らす光を見上げて、なんだか改めて違う世界だと感じた。
わたしのいるべき場所はもっと深い場所。
たくさんの大好きがある場所へ帰ろう・・・!
*Fin*
2007.08.01.
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