チラチラとカーテンの隙間から光が射し込んでいる。 チチチ・・・と小鳥がさえずる声が聞こえる。 何時なのかわからないけれど、日曜日の朝なことは確か。 まだ寝ぼけている瞳を数回瞬いて起こす。 隣を見れば、愛しい人が仔犬みたいに安らかな顔をして眠っていた。 ふわふわの栗色の髪に少し寝癖がついている。 かわいらしいその姿に思わず瞳を細めた。 いつもクールで、笑顔なんて滅多に見せなくて、冷静な姿が印象的な貴方が、 わたしにだけ、こうして気を緩めてくれるのがとっても嬉しいの。 わたしに見せてくれる微笑みが好き。 わたしの名前を呼ぶ優しい声が好き。 そして、わたしだけが独り占めできる、貴方の寝顔が好きよ。 貴方がわたしに見せてくれる、わたしだけが見れる貴方。 わたしが特別なんだって思えるの。 こんなに近くで貴方を感じられるのが、とっても嬉しいの。 そおっとベッドから抜け出して、カーテンを開けた。 朝の光がまぶしいほど輝いて入ってくる。 そっと窓を少し開けると、さわやかな風がレースのカーテンと わたしのお気に入 りのネグリジェの裾を揺らした。 ひいおじいさんがわたしの誕生日にとくれたネグリジェは ひらひらのレースと桃 色のリボンが素敵なの。 さあ、そろそろ彼を起こそうかな。 こんなに素敵な朝を見逃すのはもったいないもの。 「おはよう、さくら」 きゅっと後ろから、大きな腕がわたしのことを捕らえた。 「・・・おはよう、小狼君」 ちらりと顔を見る。 わたしだけが知ってる優しい瞳が見つめていた。 「起きちゃったの?今起こそうと思ったところだったの」 「これだけ明るければ起きるさ」 「残念。珍しくわたしの方が早く起きたんだけどなぁ」 「それはそれは。おれもさくらの寝顔が見れなくて残念」 「あはは」 ぎゅっと小狼君が腕に力を込めて、わたしをきつく抱きしめた。 「・・・小狼君?」 「さくらが・・・天使みたいに見えたんだ・・・。 そのまま、ここから飛び立ってしまい そうで・・・。だから・・・」 「・・・わたし、小狼君を置いてなんて行かないよ。ずーっと側にいる」 「・・・ありがとう」 くるりと向きを変えて、小狼君と向き合った。 優しい瞳に一点の曇りが見える。 「心配しないで。わたし、いなくなったりしないから。 小狼君のこと大好きだも の!絶対、小狼君を放っていなくなったりしないよ。 それに、天使じゃないもん」 「うん・・・そうだな・・・。でも、おれにとってはさくらは天使だよ」 「?」 「飛んでいかないように、しっかり捕まえておかなくちゃな」 ぎゅうっと小狼君がわたしを抱きしめた。 「ふふっ。自分からここにいる天使なんだから、捕まえてなくたってずうっと一 緒にいるよ!」 朝陽はわたしを天使に見せたみたい。 捕まえられた天使は、逃げないように捕まえてなくちゃいけないかもしれないけ ど、 自ら貴方の元に舞い降りた天使ならそんな心配いらないでしょう? わたしは貴方の側にずうっといる。 だから、貴方もずっとわたしの側にいてね。 朝になったら、優しいキスと優しい声で「おはよう」って言って起こしてくれる 。 そんな距離でいて・・・。 2006.06.20. |